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うさ太郎と竜田肉号(たつたにくごう)

ep14.いつの日か私が…





・よう、ヘレン!一緒にお茶しようぜ。
・犬なんて大嫌い!
・なぜ?


・やぁ、ヘレン。特性スープを作ったから飲んでみないかい?
・あら!美味しい!さすがクラムさん!!


・でもダメなの!
 あなたも犬なのよ!
 ごちそうさまでした!!
・おう!


お嬢さん。なにゆえに しけた顔をしているんだね?


この老いぼれの戯言を聞いてくれるかい?
君のような可憐な乙女を見るのは初めてだよ。
まるで この広い太平洋で一輪のバラに出会ったようだ。


あえて言おう!まさに奇跡の出会い!
紺碧の乙女セニョリータ!


またアホ犬が…。
エクスキューズミー・ジェントルマン。
申し訳ありませんが一般の方の乗船はまだ許可されていません。


もちろんルール違反は心得ているとも。ソーリー。
実は我が主の船旅に先駆けてトップデッキの視察をしているのだよ。


なぜならば
我が主にとって、この度の船旅は婚前旅行なのだ。
しかもフィアンセとは初対面。
お二人の運命の出会いを輝かせるために
緻密かつ大胆な舞台演出を構想中というわけなのだ。


我が主スズボード卿と麗しきペリーヌ嬢。
目と目が合った瞬間に世界が!天空が!祝福し
太陽のような輝きで二人を包み込むのだ。
私はいまこの構想を6万ページの台本に書き上げようと…。


ですから、安全上、一般の方の乗船は禁じられていると…。




あらら!すみません!
まさかお客様がいらっしゃるとは思いませんでした。
消防訓練中なので危ないですから大至急下船なさってください!


・なんと失敬な!
 この私を誰と心得るか?
 私はスズボード卿に執事するセバスチャン・ヨーゼフであるぞ!

・足もとお気をつけて。




ナイス!カルルスさん!


・ヘレンさんのカバンですよ!
・サンキュウ。




お姉さん、キレイ。


おお!マリリンは見る目があるなぁ!


・マリリンちゃんには敵わないですよー。
・きゃははは。




・さぁ!忙しくなるわよ!
・オー!


そうだ!


カルルスさん…。


すみません!
お写真を拾いまして、その時に踏んで汚してしまったあげく
破ってしまいました!
大切な奥様の写真を台無しにしてごめんなさい!!


おお!拾ってくれてたんですか。ありがとう。


まったく気にしなくてOKですよ。大した写真ではないですから。


・大したことないって…亡くなった奥さんの写真よ。冷たい男ね!
・いやいやー、過去に拘っていてはいけませんよ。


男と女の出会いなんてのは儚いもの。
マリリンにも新しいママが必要だし!
ヘレンちゃんは子供好きかな?


はぁああああ?正気なの?
ジュリ!こいつ本当にダメだ!
絶対に近づくなよ!


・ジュリエッタさんだったらいつでも大歓迎ですよ。
 マリリンのママになってくれますか?

・アホ犬!!クズ犬!!!!


・パパ!お姉ちゃん達にご迷惑かけちゃダメでしょ!
・すみません…。
・ヘレンさんストップ!ストップ!!!


・カルルス!あっちに美女発見!!
・今行くぞ!!


・パパはアホですねー。
・そうなんだよ。マリリーン。


・わたし男なんて大っ嫌い!
 ね!ジュリ!

・へ?


pepsi!

・ごめんなさい!!

・謝らないでちょうだい。孤独が深まるわ…。




カルルスさんはあんな風にしているけれど…。
船にいたときのカルルスさんは…。


いつも夕陽を見ていたのはどうしてなの?


「俺には長すぎる…」
・「TASTUTANIC」号に乗る夢を諦めたのはどうして?


それは奥様ただ一人を見ていたからですよね?


あの明るさは、悲しみの裏返しのように思える…。


いつの日か…話せる時がきたら。


胸の内を聞かせてくださいね…。


今はまだマリリンちゃんのお世話くらいしかできませんが、
いつの日か…もし、カルルスさんが私を必要としてくれる時が来たら…。


ううん!ダメ!


あの時…わかったでしょう?




この思いは決して。


伝えては…。


いけないという事を…。