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うさ太郎と竜田肉号(たつたにくごう)

ep16.行方不明の彼



ring ring ring.


・はい、はい
・昨晩の女性だが、自宅には電話がないそうだ。


・お前がアパートまで行ってきてくれ。
・仕事の時間が…。


ここかな?
えーと…イータイクス…。
イータイクス・オーミキー…?


困ったなぁ。不在かよ。


・あなた!オーミキーさんの知り合い?
・まぁ…一応。
・丁度良かった。家賃支払って。
・なんだって?


・私は大家ですが、家賃を滞納されて困ってるのです!
・俺の知ったことか!


本当に困ったわ。
この三か月ほど、いつ来ても奥さんだけで旦那に会えなくて。
奥さんはまったくお金を持ってないと言うし。


その奥さんが道端で倒れてて病院にいるんだよ。
大家さんから家族に伝えてやってくれよ。


まあ!それは大変ね。契約書を見返して、
旦那さんの会社に電話してみましょう。


「管理人室」
変だわね。この番号は使われていないそうよ。
何度かけ直してもダメだわ。


契約時の保証人は…親戚ね。
どうしたのかしら、これも使われてないそうよ。


どういうことかしら!!!


そういうわけで、三か月も前から旦那は家に帰ってないらしいぜ。
他に同居人はいないらしいよ。


・身元引受人がいないなら、とりあえず仕事が終わったらこっちにこい!
・えーー??




とんだやっかいものに関わっちまったぜ!


・んが!!
・コラ!いきなりご婦人に悪態をつくやつがおるか!!


・こちらはレミーさんだ。挨拶しなさい!
・カルルスです…。
・はじめまして、レミーです。




オレは、今日こそ早く帰らないと彼女とまたケンカになっちゃうんんだよね。


・ご迷惑をおかけしてしまってすみません…。
・いいや!あんたは悪くない!悪いのは旦那さんだ!


身重の奥さんを放っておくなんて考えられない!


・あんた!…ええと…レミーさん…旦那さんの親とか、親戚とか知らないのかい?

・実は…私は。


孤児院施設で育ちました。
決まりにより18才で施設を出て市営住宅へ移りました。


その時にオーミキーさんと知り合い、一緒に暮らすようになりました。今から8ケ月ほど前の話です。
オーミキーさんのご家族にはあった事がありません。


・電撃結婚だったのか。
・いいえ、籍は入れていません。同棲です。
 ですが…お腹に赤ちゃんができて…。


オーミキーさんに話したところ、
「婚姻届けを出してくる」と役所に出かけて行って…。
そのまままだ帰ってこないのです。


・事故にあったのではないかと心配で…。
 大家さんには何の連絡もないようですし、どうしたらいいのか…。

・それで三か月も音沙汰なしだってのか!!!


・もともと彼は仕事が忙しくて週に一回ほどしか帰ってこないので、たまたまかもしれません…。

・たまたま?いや、いや、いや、いくら仕事が忙しくてもそれはないでしょう。

・婚約届を書いた時の旦那さんの本籍とか証人とか覚えてない?
・届はオーミキーさんが一人で書いたのでわかりません。


・一人で書いた?
・私は…目が見えなくて…読み書きもできません。
 自分の名前だけは書けるように練習中ですがまだうまく書けません。


そうですか…。
旦那さんが早く帰ってくるといいですね…。


ドク!ちょっとこっちきて…。


・なんだかおかしな話だよね?
 オレが役所に行って調べてくるよ。
・頼んだぞ。










調べた結果、予想通り 婚姻届けは出てないってさ。
しかも、そもそもイータイクス・オーミキーなんて戸籍そのものが無かったよ。


・なるほど。そうなると答えの選択肢はそんなに多くなさそうだな。
・そうだよ。結婚詐欺?人身売買?いずれにしても彼女は騙されてるってことだよ。


・明日またアパートに行ってみるよ。何か手掛かりがあるかもしれないし。

・ところで、また午前様だが帰らんでいいのか?


ヤバい!!!!!


「明日は早朝から稽古なので帰ります」


俺たちの絆はダイヤモンドよりも固い!!!!


はぁ… まじヤバいかも…。




・すみませんね。本人が入院中でこられないので着替えとか持っていきますね。


あらまぁ、ずいぶんとスッキリとした部屋だわね。


荷物も本当に必要最低限ね。


これは…見ればわかるぜ。
恋人同士の部屋じゃないよ。
とりあえずレミーさんを押し込めておくだけの目的だったんじゃないか…。


・大家さん、旦那さんってどんな顔してたの?
・えーと…確か… こんな感じ?


さーてなぁ…どうしたものかなぁ…。




んん??
なんだかピンときたぜ!!!




逃がすかよ!!!!






見失っちゃった…。


・お兄さん、彼女にお花どう?
・あ、丁度よかった!




・サンキュー!
・まいどあり!


さっきのやつが旦那だとして、
なぜ自分の家に帰らないんだ?
奥さんが大切じゃないのかよ?


そもそも、逃げる必要があるのかよ??
何もかもおかしすぎるぜ!!!


え?やっぱり構図おかしいですかねぇ へへへ。





・あなた!ほら、このとおり全部の荷物をだしたわ。
 もう部屋は他の人に貸しますから持ち帰って!
・なんだってええええ!


ちくしょう!がらにもなく親切者ぶるんじゃなかったぜ!


腹へった…ドクの病院まで遠いから俺の家でいいや…。


・まったく忌々しいぜ、イータイクスってやつは!!!
・どうしたの?大声だして…?


・ソフィア!!俺の女神様!
・早朝からリハーサルだったから今日はもう上がり。


・なあに?この大荷物は?
 もしかして私たちの結婚生活の準備??ふふふ。

・それがさぁ、聞いてくれよ!


この間、助けた女なんだけどさ、
その旦那ってのがすごく怪しい奴でさ、行方不明なのよ。
アパートも家賃滞納で契約解消!


そしてこの荷物を心の優しい俺様が運んでやってるってわけよ。


・私の事はほったらかしのくせに、他人の女の下着の世話までしてるってどういうわけよ!
・おおおおおお!?


・落ち着けソフィア!待って!
・もう、うんざりだわ!暫く顔も見たくないわ!


ソフィア!カムバック!!!


くそー、もう止めた!
人助けなんてがらにもねぇことするからこうなるんだ!


・わわっ!
・バカ野郎!道の真ん中でパンティー広げてんじゃねー!


くっそう。いったいどこにいやがるんだイータイクスってやつはよぉ!
…そうだ、待てよ!


さっきのやつ…部屋にいたのがレミーじゃなかったから逃げたんだよな?
他人が部屋にいたからって逃げる理由ってなんだ?


いいや!逃げたからこそハッキリしたぜ!
あいつがオーミキー!
そして、犯罪者なのだ!


法の裁きを受けやがれ!
「警察署」
「市民相談」
・…と、いうわけなんですよ。


・急いで詐欺男を捕まえてくださいよ!
・んー…ダメだな。


・どうして?
・まず、その女性が被害届を出さなきゃ始まらない。
 もともと忙しい旦那なのだろう?
 今日にでも帰ってくるかもしれないじゃないか。


だから、さっきも言ったでしょ!
名前も仕事もなにもかも嘘だって!
彼女の被害届がなくたって、俺が詐欺の被害者だよ!
ソフィアと婚約解消になっちゃったらどうしてくれんのさ!


・ソフィア?
 なるほど…そうか。
 貴様が最近ソフィアちゃんの周りで飛び回っている銀蠅だったのか!
・何言ってんの?


私は昔からソフィアちゃんの大ファンだったのだ!
彼女が女たらしの船乗りにたぶらかされていると噂になって心配してたんだ…。


聞くところによると、お前は相当にアホでいいかげんで、女たらしらしいなぁ。
あーなるほど、見ての通りだ。
さっきからずいぶんと生意気だったなぁ。


それとこれとは別の話だよ!俺とソフィアの話は置いておいて。
今は詐欺師の大悪党を捕まえなきゃって話でしょ!


ははーん、読めたぞ…。
その女性の子の父親は実はお前だな!
ソフィアちゃんに誤魔化すために一芝居ぶってやがるな。


何言ってんの???


・死刑だ!死刑だ!銃殺だ!!!!
・なんでこうなるんだよ!!!


くそう、やむを得ない。自分でオーミキーを探し出すしかない!