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うさ太郎と竜田肉号(たつたにくごう)

ep18.天国と地獄





ring ring ring.
・はい… あぁ、ドク…丁度良かったよ。聞いてくれよ…。


・え?レミーさんがいなくなったの?

・「お前、今すぐにアパートの前で見張れ!」

・No!NO!これから仕事!


あれ?もしもし!切るの早いよ!

まったくもう…。


本当に人騒がせな女だよなぁ!
アパートに戻っても、もう他人の部屋なのに…。


…帰る家が無い…。 そういえば施設にいたってことは親に捨てられたのか。
そして今度は男に置き去りにされちまって…。


しかもお腹には赤ちゃんが…。
神様にも見捨てられたみたいだな…。
あの女に関わっていると人生観が変わってくるなぁ~…。


いったいぜんたい、どうしてレミーと出会っちゃったのかなぁ?
オレはどうすればいいんだ?


・カルルス!
 舞台の宣伝中だよ。ところであんた、ソフィアと喧嘩したのか?


あの子、風邪をこじらせて絶不調なのよ。
主役を降板させられて、明日の舞台は大穴だよ。マジヤバ!


・自宅で泣きっぱなしだから行ってやりな!
・本当かよ!!!


あのプロ意識の高いソフィアが体調管理を失敗するなんて…。


まったくもう。無理して連日俺の家に来るからだよ…。


まさか昨日も!?
あの台風みたいなドシャ降りと強風の中を…来たのか???


こうしてられん!
ソフィア!待ってろよ!いまいくぜ!


「こらぁ!馬鹿垂れが!レミーさんを探せボケ!!!」
・ああああああ!!!!!


なんというタイミングの悪さだ!
やっぱり普段の行いが悪すぎたのか?
全宇宙の女神様ごめんなさい!!!


あああ、レミーを探すべきか?
いやしかし、ソフィアを今フォローしなかったらマジヤバ!!!








レミー…?
あんた…何やってんだよ!


その声はカルルスさんですね…黙って抜け出してすみません。
この時間を外すと人通りが減ってしまうものですから…。


いったい何を考えてんだ!
倒れたばっかりのくせしてふざけてるんじゃねぇ!


す、すみません…。


あ…。


・まいったなぁもう…信じられないことするよなぁ…。
・ドクさんの治療代やアパートの家賃がたまってしまって…。


ドクの治療代なんか踏み倒して大丈夫だよ
それにアパートはもう他人に貸すそうだよ。


そうなんですか?どうしましょう…。
イータイクスさんが帰ってきたら困ってしまいます…。


・あぁ…あの旦那の事は当てにしない方がいいんじゃないかな…。
・もしかして、あの人に会ったのですか?


会ったというか、見かけたというか、逃げられたというか…。
まぁ、人違いかもしれないけれどね。


・とにかく、イータイクス・オーミキーってやつは、君が思っているような男ではないと思うぜ!

・何か事情があるのでは…。


事情??
君を物乞いするまで追い込んで、事情もへったくれもないだろう!


君は騙されて…。




やっぱりあの人は私との事を後悔してるんでしょうね…。


追い込んでるのは俺も同じだ…。
この人はとっくに全部わかってるんだ…。
今のレミーに必要なのは、わかりきった事実なんかじゃない…。


・とにかく帰ろう。俺のアパートが近くだから ひとまず休んでからドクの所へいこう。

・すみません…。


・あんた、最初に会った時にもこんな事やってたんだろう?
無茶しすぎだぜ…。
・すみません…。




そういう訳でドク、本人の疲労もひどいからさ、
悪いけどこっちに来て診察してほしいんだよ。


・暖かいの飲んで少し寝た方がいい。
・すみません、ベッドを汚してしまって。






・温まりますね…。
・うん、よかった!



そうか…今のレミーに必要なのは…。
ささやかな、ぬくもりなのかもしれないな…。


“ding-dong”.
早いな、ドク! カギは開いてるぜ!


Hey!


・はうっ!!!???
・入るよ。


ソフィアが熱でフラフラのくせに、あんたの所に行くってきかないから送ってやったぞ!
本当に世話の焼ける奴だ…。


・はは…Hello
・こんにちは。




落ち着いて…。


・近寄るなクソ犬!
 ソフィアに近寄ったらえぐってやる!
・これには海より深い訳が…。


shearlap!!!
浮気男みんな同じ事をいいやがる!
地獄に堕ちやがれ!犬のションベン野郎!


すみません…。


・大丈夫…俺たちの愛はダイヤよりも…。
・私から説明しますね!


・無駄無駄!今は何を言っても無駄!えぐられちゃうだけ。
・でも!


あーもう、いいから放っておいてくれよ!
余計な口出しはしないでくれ!


・やることなすこと裏目、裏目!!
・本当にごめんなさい。






“ding-dong”
・わわ!!
・レミーさんは大丈夫かの?


・遅いよ!クソじじぃ!!!
・これでもメッチャ急いで来たんだが…。


・どこに行くのだ?
・ちょっと外の風に当たってくる!




ぎゃははは、バカ犬!


ヤバい…俺のツキが急速に失われていく気がする…。